転んだり、捻ったりして発生する外傷(急性)と練習を繰り返すことにより発生する障害(慢性)があります。外傷としては、靭帯損傷、半月板損傷、骨折が、障害として腸脛靭帯炎、膝蓋腱炎、内側靭帯炎、鵞足炎、変形性膝関節症があります。
室内外のトレーニングの時あるいはアイスの上で転んだり、転びそうになって体を支えたときに発生します。
膝の内側が伸びるようになった時に発生する内惻々副靭帯損傷が最も頻度が高いのですが、一般に保存療法で治療されます。痛みに応じて早期から動かしながら治療していきます。転びそうになったり、ジャンプの着地で膝を捻ったときに、膝がガクッとずれる感じがしたときは前十字靭帯が、前に転倒して膝を強打したときに後十字靭帯が損傷されている可能性があります。いずれの靭帯も関節内にあるため徐々に関節が腫れて関節に血が貯まる(関節血症)となります。関節血症の約70%は前十字靭帯損傷ともいわれています。前十字靭帯損傷は膝の不安定性がスポーツ活動に支障をきたすことが多く、手術治療が必要となることがあります(図4)。後十字靭帯損傷は大腿四頭筋が靭帯の機能を代償するため保存治療が一般的です。
いづれも専門医を受診して適切な治療をうける必要があります。
膝を捻ったとき急性に発生する場合と、徐々に損傷が進んでくる場合があります。カーリングでは、デリバリー時、非利き手側の膝は深く曲げられ、足が捻られていることが多いため、膝に捩れのストレスがかかり、半月板損傷が起こります(図5)。症状は痛みと損傷が進行すると関節に水がたまる(水腫)ことがあります。水がたまった状態では、膝を曲げる動作に制限が出てきます。正座ができなくなったときにはこのような状態が考えられます。損傷部位の圧痛、捻ったときに痛みが強くなったり、音がすることにより診断されます。診断の確定にはMRI検査が有用で、半月板の損傷形態が推測できます(図6)。
痛みや腫れが持続するときは手術治療が必要となりますが、半月板の損傷部位により治療法が大きく異なります。半月板の内側が損傷されているときは、損傷部位を最小限の切除を行い、周辺部での損傷では縫合術(半月板を縫って治す)が可能です。
3)骨折
靭帯損傷と同様の機序で関節内の骨折を生じることがあります(図7)。
骨折部のづれがあるときは脚の形が変形(下腿が外側や内側を向いているなど)したり、関節内に血が貯まるため腫れて来ます。簡易固定して直ちに病院受診をして下さい。
4)腸脛靭帯炎
ランニングやデリバリーで膝の屈伸をくり返すことによって、腸脛靭帯が大腿外側上顆の骨隆起で摩擦をくり返します(図8)。そのために腸脛靭帯に局所的な炎症を起こして膝の外側に痛みが発生します。ある一定距離を走ると痛みを生じることや、下り坂を走る時に痛みを増すのが特徴です。
走行距離を急に伸ばしたり、インターパルトレーニングなどのスピード練習のやり過ぎ、道路の同じ側ばかり走ることなどに気をつけましょう。また、予防と治療に腸脛靭帯のストレッチングは極めて有効です(図9)。
5)膝蓋腱炎
ランニングの着地時の地面からの衝撃は脛骨粗面より膝蓋腱、膝蓋骨、さらには大腿四等筋に伝わり吸収されます。膝蓋腱にストレスが加わり、微小断裂が起こり、痛みが出現します(図10)。一番大きな原因は走りすぎです。とくに中高年者では、下肢筋力の低下、柔軟性の低下、腱の弾力性の低下などの加齢による生体側の弱点があって発現します。
走りすぎ、スピード練習による膝への負荷が増したときに障害がおきます。予防と治療には大腿四頭筋のストレッチがあります(図11)
6)膝鵞足炎
デリバリー時に右利きでは股関節が伸び、膝が曲げられ下腿が外に捻られるため膝の内側にある鵞足を構成している縫工筋、薄筋、半腱様筋、半膜様筋の腱性部分にストレスが加わり炎症をおこした状態です(図12)。
深い屈曲位から伸展するときこれらの筋が硬いと障害が起こりやすいため、ハムストリングスのストレッチが有効です(図13)。
7)変形性膝関節症
関節軟骨、関節構成体の退行変性(加齢現象)により、軟骨が摩耗破壊され、それに続き骨が増殖して骨棘が形成される変化です。肥満や過去に膝のケガをしていると起こりやすく、女性に多いのが特徴です(図14)。加齢とともに増え、60才の女性で40%、男性で20%、日本人の2530万人がが変形性膝関節症といわれています。
膝の痛み、腫れ、進行すると関節の動きが制限されてきます。動き初めに痛みが起こるのも特徴です。内側の軟骨が減ってくる場合が多く、次第にO脚になってきます。
痛みや腫れがでて炎症症状があるときには、無理をせず消炎鎮痛剤で炎症を鎮めるようにし、さらに膝周囲の筋肉の強化も効果的です(図15)。
炎症が収まってきた時は、動かしながら対応し、筋力強化と膝の動きを悪くしないようにすることが大切です。